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地球には多くの国があり、様々な文化が入り交じります。結婚の様式も様々ですが、キリスト教という宗教文化が果たしてきた役割は大きいといえます。ここでは、日本の結婚式にも大きな影響を与えている欧米や世界の結婚式について、歴史や文化的な観点から解説していきます。
1. 欧米の結婚式の歴史
西洋における結婚制度は、ギリシャ、ローマ、ユダヤ、およびキリスト教の伝統を主流として長年にわたって発展してきました。ここでは欧米の結婚と結婚式の歴史についておおまかに解説していきます。
1. 古代の結婚式
古代ユダヤ人やゲルマン人の社会は、父系首長の統率する親族集団で、結婚も首長の指示に従って行われていました。女性は結婚によって男性の氏族へ入れられ、結婚はいつでも夫から一方的に解消することができました。初期ローマでは、結婚は当事者が儀式を行うことで結ばれるようになりました。共和制の時代になると、夫婦となる意思をもつ者同士が同棲を始めることで成立します。自由な結合であり、どちらからでも自由に終結することができるようになりました。
ジューンブライド(June bride)
「6月の花嫁は幸せになれる」というジューンブライドの風習は、古代ローマからあったといわれています。これは、6月を表す英語のジューン(June)が、古代ローマの最高神ユピテル(Jupiter)の妻で女性の結婚生活を護る守護神ユノー(Juno)を讃えてその名をとったもので、女神がふたりの新しい人生を守り、幸せをもたらしてくれると考えられたためです。ユピテルとユノーは、ギリシャ神話のゼウスとヘラに当たります。
2. キリスト教結婚式の確立
コンスタンティヌス帝が衰退していたローマ帝国を再統一し、4世紀にキリスト教を公認。その後テオドシウス帝によりローマ帝国の国教とされたことが、キリスト教がヨーロッパへ浸透していく契機となりました。
キリスト教の創始者であるイエスは、結婚とは、男と女とに創られた人間が神の祝福のうちにひとつの肉体になることと説き、一夫一婦制を規範としました。866年、教皇ニコラウス1世は、結婚を成立させるものは当事者の同意であると定義しました。1563年のトリエント公会議では、結婚式に司祭と2人の立会人が立ち会うべきと定められています。
ローマ・カトリック教会は、中世を通して農村共同体の中心的な存在となっていきました。結婚は秘跡(神の恵みを人間に与える儀式)であるというキリスト教の教義により、結婚そのものに宗教的な意味が加わり、キリスト教式結婚式が全ヨーロッパ的な慣習となっていきました。
ハネムーンの起源
古代ゲルマン民族は、結婚の後の30日間、メテグリンやミードと呼ばれるハチミツ酒の一種を飲む習慣があり、これが「honeymoon(ハチミツ+月)」の語源となったという説があります。
3. 民事婚の成立
17世紀までのヨーロッパの国々にとって、結婚は宗教的なものでした。しかし16世紀に宗教改革が起こると、結婚は秘跡ではなく、民事的な契約であるという考え方が台頭していきました。
こうして登場したのが、宗教的儀礼を行わなくても、役所での挙式や届出で結婚が成立する「民事婚」です。ヨーロッパの「民事婚」は、1789年のフランス革命が始まりとされています。1791年の革命憲法で「法律は結婚を民事契約とのみ認める」と宣言され、結婚式は役場で市長村長の司式のもとに行うのが正式となりました。そして、民事婚による結婚こそが有効であるという考え方は、フランスから近隣諸国へ広がっていきます。
イギリスでは1753年に成立した婚姻法により、結婚が認められるには、結婚予告の公示を行った教会で、イギリス国教会の司式にのっとった儀式を行わなければなりませんでした。しかし、1836年に民事婚が認められ、登録官事務所に結婚通知を出し、宣誓することで結婚が成立するようになったのです。
4. 婚約・結婚指輪の歴史
婚約のときに指輪を渡す「婚約指輪=エンゲージリング(engagement ring)」の風習は、古代ローマ時代から始まったといわれています。この風習にはいろいろな説がありますが、紀元前3世紀ごろから、「契約のしるし」という意味を持つようになったとされています。婚約指輪を左手の薬指にはめるのは、古代エジプトで左手の薬指に流れる血は直接心臓に通じていると考えられていたことに由来すると言われています。このため、左手薬指に指輪をはめることで、夫が妻の心をつなぎ留めることができると考えられるようになったようです。
キリスト教が広がり、結婚式を重視するようになってくると、「結婚指輪=マリッジリング(marriage ring)」を交換する慣習も生まれてきました。結婚指輪の習慣が一般化したのは、16世紀半ば、イギリスの女王メアリI世がスペイン国王フェリペII世と結婚した時からといわれています。花婿から贈られた指輪をはめたことが、人々の注目を浴びて広がったようです。
フランス革命以降は、婚約公告のあと、市庁舎の証人の前で誓約し、指輪を交換するという形式が広まっていきました。
結婚指輪
日本では結婚指輪のことをマリッジリング(marriage ring)と呼びますが、英語ではウエディングリング(wedding ring)、またはウエディングバンド(wedding band)といいます。
2. キリスト教の結婚式
欧米の文化の中心となっているキリスト教にも様々な宗派があり、結婚式の内容にも違いがみられます。ここでは信徒の多いカトリックとプロテスタントの結婚式について、その特徴や違いを解説します。
1. キリスト教とは
イエスを救世主(キリスト)として信じる宗教がキリスト教です。イエスや使徒たちの言行を記した『新約聖書』のほかユダヤ教の聖典でもある『旧約聖書』を教典とし、隣人愛・愛(アガペー)を説きます。世界における信者数は20億人を超えていて、すべての宗教の中で最も多い信者数となります。
2. キリスト教の宗派
キリスト教は、1世紀中頃、イエスの死後に起こった弟子の運動(初期キリスト教運動)を起源としています。4世紀にローマ帝国の国教となり、広い地域に浸透しました。11世紀には、東の正教会(ギリシャ正教)と西のローマ・カトリック教会に分裂、16世紀には、カトリックに対する宗教改革からプロテスタントが生まれました。
キリスト教のおもな宗派
カトリック (ローマ・カトリック教会) |
イタリアのローマにあるバチカン市国を中心地とし、ローマ教皇を頂点にしたキリスト教の最大宗派。 |
プロテスタント | 16世紀の宗教改革で、カトリックから離脱した宗派の総称。ルーテル教会(ルタ一派)、改革長老教会(カルヴァン派)など諸派があります。 |
イギリス国教会 | ヘンリー8世の離婚がローマ教会に受理されなかったことが発端になり、16世紀にローマ・カトリックから離脱した宗派です。 |
正教会 | 11世紀頃にローマを中心とした西方教会に対し、東方で確立した宗派で、「ギリシャ正教」「東方正教会」とも呼ばれています。 |
3. カトリックの結婚式
カトリックは教会の権威を重んじた戒律の厳しい宗派です。信者同士の結婚を原則とし、離婚や受胎調節、婚前交渉なども許されていません。結婚は、子孫繁栄のために神が定めた、神に対する誓約であるとし、秘跡として扱われます。結婚式は、教会内で、叙階(聖職者を任命する秘跡)を受けた司祭により、形式にのっとって行われます。カトリックの結婚式は、キリスト教のなかで最も壮麗な儀式形態をもちます。
秘跡
英語ではサクラメント(sacrament)。「秘跡」というのは日本のカトリック教会の訳語であり、プロテスタントでは「礼典」「聖礼典」と呼ばれ、解釈も違います。
カトリックの式次第の一例
~開祭~
入堂
司式者あいさつ
初めの祈り
~ことばの典礼~
第一朗誌
答唱詩編
アレルヤ唱
福音朗読
説教
~結婚の儀~
司式者より導入のことば
結婚の意志の確認
結婚の誓約
結婚成立の宣言
指輪の祝福
指輪の贈呈
署名
共同祈願
主の祈り
結婚の祝福
聖餐式
~閉祭~
祈り
結びの祝福
結びのことば
退堂
結婚講座
カトリック教会では、結婚を予定しているカップルに「結婚講座」の受講をすすめています。「プレ・カナ・セッション」とも呼ばれます。この講座では、結婚生活の先輩である年配信者から教えを受けたり、婚約中のカップル同士で結婚生活についてディスカッションを行ったりします。「カナ」という言葉は、イエス・キリストがガリラヤのカナで行われた婚礼に呼ばれたとき、水をワインに変えたという奇跡に由来しています。
教会通路(churchaisle)
教会の入り口から祭壇に向かう中央の通路のことを、日本ではバージンロードと呼んでいますが、これは日本だけの呼称です。また、通路の敷物は赤色のみにするという説もありますが、宗教上の特別な決まりはありません。一般のミサと同様、祭壇のキャンドルは必ず灯されます。
中世のヨーロッパでは、戦争状態にある家同士が和平協定を結ぶための政略結婚が行われることがありました。その際、両家の参列者は、儀式の最中に殺し合いが起きないように通路を挟んで左右に分かれて座ったそうです。現在の結婚式で、通路の左右に両家が分かれて座るのは、この名残だという説もあります。
聖体拝領の儀式
カトリックの結婚式では、式の最後に「聖体拝領」の儀式が行われる。聖体拝領とは、最後の晩餐を記念して、イエス・キリストの体と血を象徴するパンとワインを拝受することです。現在では、パンの代わりにホスチア(hostia)という薄いウエハース状のものが使われています。
ロザリオ
カトリックでは、花嫁は数珠と十字架がついた祈りの用具ロザリオ(rosary)を身につけます。
結婚式の時期
カトリックでは、復活祭前の46日間である四旬節(Lent)を避けて結婚することが多いです。これは、「Lentに結婚する者は一生後悔する」という言い伝えがあるからといわれています。四旬節とは、イエスの受難をしのんで修養する期間とされています。
4. プロテスタントの結婚式
「プロテスタント」とは「抗議」を意味する言葉で、形式主義的なカトリックに対抗する形で生まれた教派です。そのため、一般にカトリックよりも簡素で、規律も柔軟なのが特徴です。結婚式は、カトリックの秘跡に相当する「礼典」ではなく、「祝福の礼拝」であり、洗礼を受けていなくても式を行うことができます。
プロテスタントの式次第の一例
前奏
新婦入場
讚美歌
聖書
式辞
誓約
指輪交換
祈祷
宣言
讚美歌
祝祷
新郎新婦退場
後奏
結婚式の場所
プロテスタントの結婚式は、教会の中だけではなく、牧師が聖書を持って出かければ、どんな場所でも行われます。たとえば、ガーデンや海辺、草原などの自然の中、公園や駅などの公共の場所などです。とくに近年の米国では「場所にこだわるウエディング」に人気があり、美術館や水族館、図書館など、結婚式の施設としてつくられた以外の場所で挙げる例が増えています。
ウエディング・パーティ(weddingparty)
キリスト教の結婚式は、「ウエディング・パーティ」という家族や友人の協力のもとで行われます。この場合の「パーティ」とは「披露宴」のことではなく、「一行」とか「仲間」という意味です。花嫁花婿に付き添ってセレモニーやパーティを盛り上げる役割をする人たちのことをいいます。
花嫁の付き添い人のブライズメイズが、花嫁のドレスに準じた華やかなドレスを着ることで、幸せなカップルをねたむ悪魔の目をまどわすといわれています。リングボーイやフラワーガールなど、子どもを参加させるのは、子宝に恵まれることへの願いの表れとされています。
ウエディング・パーティの構成
ブライズメイズ (bridesmaids) |
花嫁の付き添い人。おもに花嫁の友達、姉妹、親族で、未婚の女性が務める。多いときは6人ほどのチームになる。 |
チーフブライズメイド (chief bridesmaid) |
ブライズメイズのリーダー的存在。メイドオブオーナー(maid of honor)ともいわれる。 |
マトロンオブオーナー (matron of honor) |
チーフブライズメイドが既婚者だった時、こう呼ばれる。 |
アッシャーズ (ushers) |
花婿の付き添い人。花婿が信頼する友人、兄弟など。 |
ベストマン (bestman) |
アッシャーズのリーダー的存在。 |
リングボーイ (ring boy) |
結婚指輪をのせたリングピローを運ぶ少年。 |
フラワーガール (flower girl) |
花嫁の前を歩いて花びらをまく少女。 |
トレーンベアラー (trainbearer) |
花嫁のベールの端を持って歩きやすいように補佐する。 |
ページボーイ (pageboy) |
花嫁の付き添いをする少年。日本では聖書を祭壇に運ぶ少年として知られる。 |
リングピロー
結婚指輪をのせるためのクッション。欧米では、子どもが生まれた時にリングピローを枕に使う風習があります。
欧米の結婚式
欧米では、キリスト教の教会で式を挙げる伝統的なスタイル(宗教婚)と同時に、宗教によらずに役所などで式を挙げるスタイル(民事婚=シビル・マリッジ)も確立されています。ここでは、欧米各国の現代のウエディングの事情について、いくつか紹介していきます。
1. イギリス
他民族国家のイギリスには数多くの宗教宗派が存在します。異宗教同士の結婚も少なくないイギリスでは、登記所(レジスターオフィス)やレストランなどで、無宗教の結婚式を挙げる人も増えています。
結婚式
英国国教会をはじめとする教会で宗教上の結婚式を挙げる(religious service)方法と、レジスターオフィス(register office)という役所(結婚登記所)で届出結婚式を行う方法(civil marriage service)、役所が認可した場所で行う方法があります。教会で結婚式をする場合、日曜日はミサがあるため、土曜日に行われることが多いです。宗教によっては、役所での手続きが必要な場合もあります。
いずれの場合も、結婚の証人2人の立ち会いと署名が必要です。
結婚許可証
結婚するには結婚許可証が必要となります。日本のような戸籍制度のないイギリスでは、重婚を避けるため、「結婚予告」を行い、異議申し立てがなければ結婚許可証が発行されます。
役所結婚式
レジスターオフィスで行う場合、結婚登記官と呼ばれる役人により式が行われます。花で飾られた部屋の正面に登記官、その前に新郎新婦、その後ろに式の参列者が着席します。式にはウィットネス(witness)という2人の証人も必要となります。宣誓の言葉や指輪の交換のあとに結婚登録書への署名をする10分ほどで終わる簡素な式です。登録後、結婚証明書が発行されます。
1995年からは役所が認可したレストランなどでも結婚式をすることができるようになりました。その場合、2名の登記官が出向いて行われます。
披露宴
結婚式が終わると、新郎新婦と式の参列者は披露宴会場へ向かいます。会場はホテルやレストラン、パブなどで、自宅の庭や公園に真っ白なテントを立てて行う場合もあります。おしゃべりを楽しみながら飲んだり食べたり、生演奏の音楽で踊ったりして自由に楽しむことが多いです。
ウエディングギフトリスト(wedding gift list)
イギリスでは披露宴に招かれたときにご祝儀の現金を持参する習慣はありません。お祝いは夫婦の新生活に必要なものを贈りますが、結婚するふたりがお気に入りの店に欲しいものをリストアップして登録し、贈りたい人が自分の予算に合わせてその中から選ぶという効率的な方法があります。
各地の風習・言い伝え
●イングランド
教会に行く途中、煙突掃除人と出会ってキスをされたら花嫁は幸せになるという言い伝えがあり、披露宴の演出として煙突掃除人を装ったパフォーマーが登場することもあります。
●スコットランド
花嫁の靴のなかに6ペンス硬貨を入れておく、あるいはブーケに小枝をしのばせておくと幸運がもたらされる、という言い伝えがあります。
●ウェールズ
求婚の際に「ラブスプーン(love spoon)」を贈る習慣があります。男性が手彫りのスプーンを女性に贈り、それを女性がリボンに通して首にかけたら結婚承諾の意味をもつといわれています。
2. フランス
恋愛にオープンで離婚も多いフランスでは、結婚も入籍もしないまま夫婦生活を送り、子どもを産み育てる「事実婚」が増えています。1999年に事実婚カップルに法的権利などを与える制度(PACS=連帯市民協約)という制度ができてからは、いっそうその傾向が強まっているようです。
結婚式
フランスの結婚は、市町村役場(mairie)で民事婚(mariage civil)を行うことで成立します。市町村長や助役などが式を執り行い、出生証明書などの提出書類を確認し、結婚に反対する者がいないかを確かめて、民法の該当箇所を読み上げます。結婚するふたりの「ウィ」の返事で結婚成立となり、戸籍原簿に記載されます。民事婚では、花嫁側、花婿側それぞれに証人が必要です。
民事婚で結婚が成立するので、教会での宗教婚(mariage religieux)は、約半数とされています。
披露宴
レストランや宴会場などで行われることが多いです。ウエディングケーキはシュークリームを積み上げた伝統的な菓子「クロカンブッシュ」がよく知られています。食事の後はワルツやタンゴを楽しむダンスタイムで、夜から朝方まで踊り続けることもあるそうです。
ウエディングギフトリスト(wedding gift list)
ウィッシュリスト(wish list)ともいいます。欲しいものをリストにする方式は、欧米の他の国でも行われており、アメリカでは「ウエディング・レジストリー(wedding registry)」ともいいます。フランスでは「リスト・ド・マリアージュ(liste de mariage)」、イタリアではリスタ・ディ・ノッツェ(lista di nozze)」と呼ばれています。
3. イタリア
カトリックの国イタリアでは、街のいたるところに教会や聖堂が立ち並び、ミサや結婚式が行われています。敬虔なクリスチャンとしての信仰心と、陽気で家族思いのイタリア人気質が融合したのが、イタリアの結婚式です。
結婚式
イギリスやフランスと同様、通っている教会で結婚式をする方法以外に、役所で挙式する方法があります。手続きは、はじめに必要書類(出生証明書、居住証明書、独身証明書など)を揃えて申請し、役所に公示されて異議申し立てがなければ、市長(またはそれに準じる人)と証人の立ち会いのもと行われます。教会で結婚式をする場合は、「結婚講座」を受講する必要があります。
披露宴
結婚式後は、家族や友人とともにお祝いの行列をしたり、オープンカーに乗ったりとにぎやかに祝うことが多いです。近所のレストランなどへ移動してレセプション(披露宴)を開くことも多いようです。披露宴に決まった形式はなく、列席者と郷土料理を楽しみながら歓談するというスタイルです。
4. アメリカ
多民族、多宗教で人種のるつぼと呼ばれる米国は、結婚式も多種多様。ウエディング・プランナーが企画する富裕層の豪華な披露宴から、自宅でのカジュアルなパーティ、アイリッシュ移民の厳粛なカトリック式、ネイティブアメリカンの伝統式など、あらゆるスタイルがみられます。
結婚式
結婚式をするには、結婚許可証(marriage license)が必要です。結婚は州法によって異なり、役所へ申請書を提出し、発行された許可証の有効期間中に結婚式を行います。式は教会の牧師・神父、裁判官、資格のある司式者などのもとで挙げられ、結婚許可証に署名をもらい、役所に登録します。
結婚式の後は会場を自宅やレストラン、ホテルなどに移し、パーティが行われます。
ブライダルシャワー
結婚式が近づくと、「ブライダルシャワー(bridal shower)」と呼ばれる花嫁を囲む女性だけのパーティが開かれます。花嫁を祝福するためにブライズメイドが企画するもので、新婦の親戚や同僚、友人などが招待され、集まったプレゼントが披露されます。新郎は男性の友人たちとバチェラーパーティ(bachelor party)をおこないます。
クロカンブッシュ
プチシューを積み上げてカラメルや糖衣をかけたクロカンブッシュは、フランスで17世紀頃から流行しました。シューはフランス語で「キャベツ」の意味。ヨーロッパでは赤ちゃんがキャベツ畑から生まれてくるといわれることから、プチシューをキャベツに見立てて子孫繁栄を願い、幸せが天まで届くようにと高く積み上げたといわれています。
ユニティフィケーションセレモニー
ハワイをはじめ米国に広くみられる風習です。「ユニティフィケーション(unitification)」とは“ひとつになる”という意味で、火、水、ワイン、砂、マメなど、混ざり合うともとに戻らないものを、新郎新婦が別々の器からひとつの器に移し、ふたりがひとつになったことを確認する儀式です。ユニティキャンドル(unity candle)というセレモニーも、同様の意味をもちます。
4. その他の宗教と結婚式
世界にはキリスト教以外にも様々な宗教があります。ここでは、キリスト教の母体となったユダヤ教、世界的に信者の多いイスラム教、東南アジアを中心に欧米にも信者のいるヒンズー教の結婚式について概説します。
1. ユダヤ教
ユダヤ人の宗教であるユダヤ教は、紀元前にローマにエルサレムを破壊されてから1948年のイスラエル共和国の成立まで、2000年あまり国をもてなかったユダヤ民族に継承されて、世界中に広まりました。正統派、保守派、改革派など、様々な宗派があり、結婚式のしきたりや伝統も異なりますが、共通するものも多くみられます。
ケトゥバ
ユダヤ教の結婚では、結婚式の前に「ケトゥバ(ketubbah)」と呼ばれる結婚の契約書を交わす儀式があり、これをすませてから結婚式が行われます。
結婚式の進行
結婚式は、フッパー(chuppah)という天蓋の下で、ラビ(rabbi)というユダヤ教の神職者によって行われます。まず花嫁は花婿の右側に立ち、花婿のまわりを3回、あるいは7回まわります。3と7は聖書では神秘の数字とされています。そしてラビの祈祷が行われ、花婿と花嫁は1杯目のワインを口にします。次いで指輪の交換が行われますが、ユダヤ教独特の風習で、花婿は指輪を花嫁の右手の人さし指にはめます。ケトゥバが読み上げられ、ラビにより結婚の宣言がなされます。2杯目のワインを口にすると、最後に花婿がグラスを足で勢いよく踏んで割る「グラス割り」が行われますが、これもユダヤ教独特のものです。
披露宴
結婚式から披露宴までのあいだ、花婿と花嫁がふたりきりで過ごすイフッド(yichud)の時間がもうけられ、そのあと披露宴が行われます。ユダヤ教の披露宴には、「クレズマー(klezmer)」というユダヤの民族音楽と踊りが欠かせません。
2. イスラム教
イスラム教とは、唯一絶対神のアッラーを信仰し、最後の預言者たるマホメットを通して神がくだしたとされるコーラン(クルアーン)の教えに従う一神教です。結婚はイスラム教においては「契約」であり、結婚後の生活に関して契約を結ぶことが結婚式となります。信者同士の結婚が原則ですが、男性の場合、相手がユダヤ教やキリスト教などの一神教の信者であれば、改宗しなくても結婚することができます。
マハル
イスラムにおける結婚は、男性が女性に対して経済的な責任をもつべきと考えられています。そのため、結婚の契約時に、男性から女性に支払われる「マハル(mahar)」という結婚契約金の取り決めがなされます。
婚約
イスラムの結婚は見合いによるものが多く、子どもたちが成人する前後に両親が相手を探し、縁組をします。そしてマハルなどの条件が一致すれば結婚の準備が始まります。
結婚式
イスラムの伝統的な結婚式は、男女で分かれて行われるのが特色です。
ニカ(nikah)という結婚式は、男性側で行われます。宗教的指導者と2人の証人の立会いのもと、花婿と花嫁側の代理人がマハルの内容を確認し、結婚の契約書にサインをするというのが式の内容で、その間、花嫁は別の場所で待機します。
結婚式が終わると、花婿側(男性)、花嫁側(女性)に分かれたままフリマ(walima)という披露宴が始まります。花嫁側の披露宴は花婿側のごちそうの残りで行われるため、花婿側より遅れてスタートします。
離婚
キリスト教では原則として認められていない離婚が、イスラム教では認められています。イスラム教の離婚は、男性側が自由に決めることができます。
結婚衣装
イスラム教では、人前で肌を見せることが禁じられているため、女性が外出するときは「ヘジャーブ(hejab)」というスカーフを頭に巻き、「アバヤ(abaya)」という全身が隠れるような上着をまといます。婚礼衣装も、髪と全身をおおうようなデザインが基本です。
3. ヒンズー教
ヒンズー教は、インドを中心に広がった多神教の宗教で、古代インドの民族宗教だったバラモン教を前身とします。
ヒンズー教の大きな特色として、人の身分をバラモン(司祭)、クシャトリア(王族、貴族)、バイシャ(平民)、スードラ(奴隷)に分けるカースト制度があり、異なるカースト同士の結婚は原則として禁じられています。そのため、ヒンズー社会の結婚は、同カースト内での見合い結婚が基本でした。
結婚式
ヒンズー教の結婚式は、鮮やかな色彩に彩られた華やかで神秘的な儀式です。寺院や家の庭などに、美しく装飾された「マンダップ(mandap)」という天蓋付きの舞台がつくられ、この中に花嫁と花婿が座って式が進行します。
火の儀式
ヒンズー教では、火の神である「アグニ(agni)」が、神の世界と人間の世界のつなぎ手であるという考えから、儀式に火が用いられることが多くあります。結婚式では松明に火がともされ、その場所で僧侶がマントラ(ヒンズー教の聖典)を唱えたり、白檀の粉や薬草などを投げ入れたり、花嫁花婿が聖火の周りを歩いてまわるなど、火が儀式に重要な役割を担います。
赤い粉の儀式
花婿は、花嫁の額に「シンドゥー(sindoor)」という赤い粉をつけます。これはターメリックの粉で、ヒンズーの世界では幸運の象徴とされています。
披露宴
ヒンズー教の人々は、披露宴に惜しみなくお金をかけます。たくさんの贈り物の交換をし、数日にわたって祝宴をし、音楽や踊りや花火で盛り上がりますす。
結婚衣装
インドの花嫁の結婚衣装は、金糸銀糸の刺繍やビーズで華やかに飾られた赤いサリーです。バリでは、王族や貴族階級が身につけていたような、きらびやかな金箔の伝統衣装に身を包みます。
まとめ
今回の『世界の結婚式の歴史と文化』では、欧米をはじめとした世界の様々な国の結婚式の文化について書きました。
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