ウェディングプランナーの仕事は、お客様の一生に一度の幸せの日に携われるので非常にやりがいを感じられる一方、労働時間が長く給料もそこまで上がらない、売上や成約数など数字責任が大きい、またはライフステージが変化下など様々な理由で、転職や職種変更を希望する方も多いのも事実です。私もブライダル企業のマーケティング責任者をしていた時は、異動先の受け入れ側として多くの方とお話しする機会がありましたし、実際に移動してきたメンバーとも一緒に仕事をしてきました。そこで今回の記事では、ウェディングプランナーからマーケティング部門にキャリアチェンジをするならどんなスキルが必要か、についてまとめました。
目次
- 1ブライダル企業のマーケティングの仕事とは?
- 2ブライダルのマーケティングの仕事をするのに必要なスキル
- 2.1前提として必要なスキル
- 2.2ゼクシィなど雑誌・紙面の広告出稿の業務に必要なスキル
- 2.3ゼクシィネット、みんなのウェディングなどウェブ媒体の広告出稿に必要なスキル
- 2.4ゼクシィなび、ハナユメカウンターなどエージェントからの集客施策に必要なスキル
- 2.5リスティング広告やFacebook広告、SEO対策などウェブ集客施策(内製、外注問わず)
- 2.6FacebookやInstagramなどのSNSの公式アカウントの運用
- 2.7TV、交通などマス広告
- 2.8年間広告予算やマーケティング戦略の策定
- 3ウェディングプランナーをしながらこれらのスキルを身につけるためには
- 3.1PCスキル
- 3.2集客に関する知識・興味
- 3.3ブライダル業界の基礎知識
- 3.4マーケティングの専門知識
- 4まとめ
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ブライダル企業のマーケティングの仕事とは?
ブライダル企業のマーケティング部門の仕事は、大きく分けると以下のような仕事があります。
- ゼクシィなど雑誌・紙面の広告出稿
- ゼクシィネット、みんなのウェディングなどウェブ媒体の広告出稿
- ゼクシィなび、ハナユメカウンターなどエージェントからの集客施策
- 会場サイトなどのサイト管理やリスティング広告やFacebook広告などウェブ集客施策(内製、外注問わず)
- FacebookやInstagramなどのSNSの公式アカウントの運用
- TV、交通などマス広告
- 年間広告予算やマーケティング戦略の策定
※会社の規模によって、専任だったり兼任だったり担当者の業務区分は様々だと思いますが、今回は売上が数十億円以上の規模の会社をを想定して書いています。それより小さいと専任の部門を置かず、プランナーや支配人が兼務していることも多いと思います。
ブライダル企業におけるマーケティング部門の目的は「結婚式場を探しているカップルの集客」としているところがほとんどだと思いますし、それを達成するための方法論として上記の1~7の各集客施策を実施している、という感じですね。もちろん、どの企業でも1~7のすべてを実施しているわけではないですし、イベント開催や異業種とのコラボレーション企画など上記以外の施策を行っている会社もあると思いますが、今回の記事では一般的な(と思う)上記の仕事について書いていきます。
ブライダルのマーケティングの仕事をするのに必要なスキル
では、これらの業務を行う部門で仕事をするにあたって必要なスキルはどのようなものでしょうか?
前提として必要なスキル
- ブライダル業界の基礎知識
- Excel、PowerPointなどのOfficeのスキル、基礎的なPCスキル
- タスクの進行管理力
- 基本的な経営数字の理解
まず前提として、マーケティング部門の限らずですがブライダル業界の基礎知識とOfficeなどのPCスキルは必須です。ブライダル業界は「ユーザーがリピートしない」「BtoCで個人が支払う商品としては非常に高額」「商材が無形」「サービス提供者よりメディア(媒体)のほうが圧倒的に認知度が高い」など、業界ならではの特徴が数多くありますので、そのあたりの基礎知識を理解していないとけっこう厳しいと思います。また、基本的に多くの時間をPCの前で仕事をすることになるので、正直なところPCがまったく使えないと話になりません。
ゼクシィなど雑誌・紙面の広告出稿の業務に必要なスキル
- ユーザーインサイトを読み解き、仮説を立てる力
- デザインへのアウトプット力
- 複数の業務を同時並行で進められるプロジェクトマネジメント力
雑誌媒体はウェブ媒体と違ってリアルタイム性がなく、1か月に一度や3か月に一度など一定期間ごとの発売に合わせて掲載する内容を決めて入稿業務を進めえていく、というのが基本的な仕事のフローになります。専任のマーケティング部門を設置している規模の会社であれば、紙面担当者は複数会場×複数雑誌を担当するのが一般的で、企画~構成案~入稿~(発売)~結果分析までの一連の流れを、複数の進行を同時に管理していくプロジェクトマネジメント力が必要になります。
また、ユーザーに刺さる紙面構成や写真のセレクト、素材撮影を考えることも業務範囲になりますので、どんな構成(チャペルが前、外観が前、など)でどんな写真(モデルありなし、演出系写真など)を使うと集客を最大化できるかを常に考えることが重要です。しかもウェブ媒体と違い一度入稿すると発売後の変更がきかないので、しっかりと仮説を立てて、それを紙面に落とし込み、効果を検証する、というサイクルを回せるスキルも必要になります。
ゼクシィネット、みんなのウェディングなどウェブ媒体の広告出稿に必要なスキル
- 数字に強い(せめて抵抗がない)
- ウェブマーケティングの基礎知識
- タスク量が膨大でもれなく地道にやれる力
ウェブ媒体担当者の業務の目的は、ウェブ媒体に自社の結婚式場を掲載し、そこからの集客を最大化することです。具体的には、サイト内のフォトギャラリーの拡充・整理、掲載するプランの企画・検討、ブライダルフェアのタイトルやリード分の検討やフェアそのものの企画、媒体ごとの管理が亜面及びその他基本的事項の管理、などです。また、特にゼクシィでは紙面とゼクシィネットの掲載順番が連動していたりするので、常に紙面担当者と連携しながら仕事を進めることが重要です。
ウェブ媒体担当者の業務は、媒体別の管理画面からフェアやプランなどの日々の更新までを範囲とするかどうかによって業務量のバランスは大きく変わると思います。最近ではタスカットを導入している会社も多いとは思いますが、日々の入稿まで業務範囲に含まれる場合は、こつこつと地道な作業を繰り返し行える力が意外と重要だったりします。
さらに、ウェブ媒体の担当者は紙面と比べて数字を読み取る力がかなり重要になります(紙面担当者は数字読めなくていいわけではないですよ)。というのも、ウェブ媒体の結果はすべて細かく数字で表すことができます。サイト来訪者数、会場ページの閲覧者数、ブライダルフェアページの閲覧者数、フォーム閲覧者数、各ページの遷移率…、などなど。これらの数字とにらめっこをしながらユーザー心理を考え、施策に落とし込んでいくので、数字を扱うことへの抵抗がある方は少し厳しいかもしれません。
ゼクシィなび、ハナユメカウンターなどエージェントからの集客施策に必要なスキル
- エージェント訪問の経験
- ウェブと雑誌との連携(単独エージェントだけではない)
- 企画力、実行力
エージェント担当を専任でおいている会社はあまりないかもしれませんが、会場のプランナーが行っているエージェント訪問以外に、専任でエージェントからの集客を伸ばすための施策を行います。具体的にはフライヤーなどのツールの企画制作、なびの店長クラスへの営業、エージェントへの自社会場の勉強会・試食会の企画実施(ゼクシィなびは無理)などです。
そもそもエージェントがどのような仕組みで回っているのか、どういったことを希望するのかを理解していることに加えて、雑誌やウェブと連動しているところも多いのでその仕組みを理解している、さらにどういう施策を打つと集客につながるのかを地道なヒアリングから仮説を立てて実行していく企画力も重要です。
ちなみに余談ですが、私が以前働いていた会社ではエージェント担当を置いた後、劇的に集客が伸びたのでそれなりの規模の会社は検討されてみるといいと思います。
リスティング広告やFacebook広告、SEO対策などウェブ集客施策(内製、外注問わず)
- Google Ads、YSS、YDN、Facebook広告、twitter広告、DSP広告など、運用型広告の基本的な知識
- Google Analyticsやアドエビス、ウェブアンテナなどの分析に関する知識、GTMやYTMを使ったタグ管理に関する知識
- ユーザー、セッションなどのサイト用語、CPC、CVR、CPAなどのデジマ用語と仕組みの理解
- SEO、コンテンツマーケティングなどの仕組みの理解
この仕事はかなり専門性が高いので、もし社内に専任担当者がいない状態でかつ未経験から担当者になるにはかなり厳しいと思います。こちらの業務の詳細はここでは割愛しますが、上記4点についてすらすら話せるくらいのスキルは必要です。
FacebookやInstagramなどのSNSの公式アカウントの運用
- SNSが好き(個人でアカウントを持っていて普段から使っている)
- ブランディングに関する知識、経験
- 社内の他部門と協力できる力
まず前提として、SNSを普段から使っている人のほうが圧倒的に向いています。SNSごとに世界観や使っているユーザー層も違いますし、そのあたりの肌感覚を持っている人でないと難しいと思います。具体的な業務としては、投稿コンテンツの企画・スケジュール設定、投稿やユーザーコメント対応などのアカウント管理、キャンペーンなどの企画や予算管理、などになるので基本的なPCスキルは必須ですし、また企業アカウント(もしくはブランド、式場単位のアカウント)を運用することになるので、ブランディングの知識もあったほうがいいでしょう。
TV、交通などマス広告
- 外部代理店との折衝力
- 予算やスケジュール管理力
- クリエイティブのセンス
ほとんどの場合は外部の代理店と協力して広告を進めることになるので、そのやり取りを円滑に進めるためのディレクション力は必須です。単体の式場でマス広告を使っているところは少なく、会社単位もしくはブランドで広告を使っている場合が多いので、こちらもブランディングの知識はあるといいと思います。
年間広告予算やマーケティング戦略の策定
- 管理職としての能力
- 社内の他部門との折衝力
- 会計知識、事業PLの作成力など経営にかかわる数字の理解と実務経験
予算策定や戦略設計の業務はほぼ管理職の仕事になると思いますが、このレイヤーになるとマーケティング部門のみならず、営業組織や経営企画、管理本部とも連携しながら業務を進めていくことになるので、そういった総合的なビジネス力は必須です。さらに、各施策の遂行を管理する力はもちろん、施策の意図や実行計画をメンバーにしっかりと落とし込み推進していくマネジメント力も必要です。
ここまで7つに分けて書きましたが、いずれもすべてのスキルがなければ仕事が務まらないというものではなく、もし自分がマーケティング部門の責任者だとしたらどういうスキルや経験を持つ人を期待したいか、という観点で書かせていただきました。
最後に、ウェディングプランナーの仕事をしながらこれらのスキルを身に着けるためにはどうしたらいいかについても書いて、この記事の締めとします。
ウェディングプランナーをしながらこれらのスキルを身につけるためには
先ほどは7つの業務ごとに具体的な仕事内容と必要なスキルを列挙しましたが、大まかに分けると①PCスキル②集客に関する知識・興味③ブライダル業界の基礎知識④マーケティングの専門知識、の4つだと思います。もしマーケティングの仕事をしてみたいと思うのであれば、できれば4つ、少なくとも①と②は身に着けておいたほうがいいでしょう。もちろん会社ごとに事情もあるので、希望すればキャリアチェンジできるわけでもないと思いますが、将来的に考えているのであれば少しでも早い時期からそういう意識をもって業務をしていたほうがいいと思います。
ちょっとしたアイディアベースですが、個人的にオススメの方法を書きます。
PCスキル
これは練習あるのみですね、デスクワークから逃げないことと、苦手意識を持たないことが大切です。ただ、PCスキルといっても上限もないので、最低限これだけは!というのを上げさせていただくと「ブラインドタッチ」「ショートカットキー」「エクセル」の3つですね。
「ブラインドタッチ」はタイピングが遅いとほんときついと思います、マーケティングに限らず。これは練習するしか方法はないので、フリーのタイピング練習ソフトなどを落として、毎日練習しましょう。
「ショートカットキー」は知っているだけで作業スピードが断然速くなります。Ctrl+C、Ctrl+Vくらいはほとんどの方が知っていると思いますが、Alt+TabなどAltキーを使ったショートカットまで覚えられるといいでしょう。使い始めた最初は手が慣れていないので煩わしいことも多いと思いますが、100回くらい同じショートカットキーを使うと手が覚えてくるので、そこまでは頑張ってください、あとは慣れです。
「エクセル」はあらゆる場面で使いますので、使いこなせて損はないでしょう、というか使えないとしんどいシーンのほうが多いかもしれません。基本的には実際に手を動かして練習するしか方法はないかなと思います。関数をバリバリ使える必要はないと思いますが、エクセルで何ができるのかは知っておいたほうがいいでしょう。個人的には本を読むよりネットで調べながら自分でやってみる、を繰り返すというのが一番成長が早いと思います。
ここに上げたような仕事は日々のウェディングプランナーの仕事の中でも行うことは多分にあると思うので、その時に少しでも早くタイピングを、一回でも多くショートカットキーを使う、など少しずつ意識をして練習してみましょう。
集客に関する知識・興味
PS4ブライダルの集客方法については、専門的に書かれた本もないですし(少なくとも私は知らない)、一般的なマーケティング論やデジタルマーケティングのHowtoのように解説しているサイトもないので、座学で体系立てて理解することはなかなか難しいと思います。また、ここはシンプルに興味・関心によるところが大きいと思うので、とにかくいろんなところにアンテナを張って生活をしましょう!というのが大事です。
例えば、新規来館時のお客様アンケートのゼクシィにチェックが入ってたら、なんでか理由を考えて見たり、自分だったらどういう写真使うか考えて見たり、街で見かけた交通広告はどういう意図でこのクリエイティブになったのかを考えて見たり、TVCMのターゲットは誰なのかな?って考えて見たり。
今の日常はネットもリアルも広告であふれています。スマホを開けばバナーが追いかけてくるし、電車に乗れば広告だらけですし。ただ広告ウザいなと思うのではなく、この広告はどんな意図で誰に向けて作られたものなのか?、少しでも考えることを習慣づけておくといざ自分がその立場になったときに役に立つと思います。
ブライダル業界の基礎知識
ウェディングプランナーの仕事をしていると、自分の業務については深い知識を持っていますが、業界全体の知識はさほど身につきません。売上は目標として持っているから達成のために頑張るけど、このコース料理はなぜこの単価設定なのかをしっかり理解している人は意外と少ないのではないでしょうか?
マクロな視点で見たときにどんなことが業界全体で起こっているのか、市場のプレーヤーにはどんな人がいるのか、市場規模はいくらくらいあるのか、今後5年で起こりそうなことはどんなことか、など、基礎的な情報は調べればすぐ出てきますし、通勤時間などに毎日ちょっとずつでも勉強しましょう。
また、直接お客様と接するプランナーの仕事と比較して、マーケティングではより幅広くとらえて施策を展開していくので、ちょっと引いた視点で自分の業務を見る癖をつけておくといいのではと思います。
マーケティングの専門知識
これはもう、本買って普通に勉強しましょう。どちらかといえば「マーケティングとは?」とか基礎的な本などを繰り返し読んだり勉強したりするほうがいいと思います。「リスティング広告の運用方法」のような実務に近い知識もあってもいいですが、結局自分でやらないとわからないことのほうが圧倒的に多いので、まずは基礎的な知識を体系的に勉強して大枠を理解しておく、というのがオススメですね。リスティングの管理画面の使い方知らなくてもなんとかなります、覚えればいいだけなので。
まとめ
書き始めたら意外と長くなりました。書いてみて思いましたが、ウェディングプランナーのキャリアチェンジだけでなく、これからブライダル業界でマーケターとして働きたい転職者にも参考になるのではないかと思います。プランナーを続けるか悩んでいる方の役に少しでも立ててたらうれしいです。